今年の平石和男はひと味違うのではないか。そう思えたのは関東地区選の優勝戦である。
2月16日、平和島で開催された関東地区選の優勝戦。平石は優勝戦1号艇で乗艇、インからコンマ01のトップスタートを決めて逃げ切り、三度目の地区選制覇を果たした。津や住之江のインではなく、インが弱い平和島での逃げに価値があり、それより何より、コンマ01でハナを切った事実に、今までとは『ひと味違う』スパイスを感じさせるのである。
平石を知っている読者の方ならご存じだと思うが、平石はスタートで無理をしないタイプである。とても真面目な人格者。フライングをしてファン・施行者に迷惑をかけられないという強い思いがあるのだろう。ちなみに、地元戸田では、スタート自重の傾向がより顕著に現れる。それでもSG級を張っているのは、超一流の旋回技術があるからに他ならない。そんな選手が、売り上げが多く重圧のかかるGI優勝戦で、もしフライングをしたら自身も重い罰則を受けるGI優勝戦で、前述のコンマ01である。
平成19年の埼玉支部表彰で『最優秀選手賞』を受賞した時も、『バッハプラザ賞』を受賞した時もだが、壇上での表情は冴えなかった。平石の言葉を借りれば「こんな成績で…」選ばれたことに、嬉しさ反面、内心じくじたる思いがあったのだろう。昨年の戸田では、GW開催の優勝、7月グラチャンと11月51周年の優出がある。他選手と比較しても、埼玉ナンバーワンとして十分な成績だが、内容は確かに芳しいものではなかった。グラチャンはスタート遅れて惨敗、51周年は1号艇で人気を集めながらも着外に消えた。
穴ではなく本命としての立場で、ここ一番、スタート決めて押し切った関東地区選の優勝戦は、言わば横綱相撲である。今までの特別戦で『金星』は多々あった平石だが、横綱相撲を今後も続けることができれば、年末の住之江では結びの一番を取っているはずだ。