■−選手達が語るアシの種類−■
出足、伸び、かかり、フネの向きなど選手達は様々な表現で自身のアシについて語ってくれます。しかし、細やかな表現の為、「研究」の選手コメント欄を読んでもピンと来ない人がいるのではないでしょうか。今回はその用語の解説をしたいと思います。ただ、選手によっては多少違う意味で言葉を使うこともありますので、ご了承下さい。
◆ ピット離れ
ピットに待機しているボートが、出走の合図とともに発進する時のこと。素早く発進できることを「ピット離れがいい」などという。ピット離れが悪い(遅い)と、好きなコースが取りづらい。
◆ 起こし(=握り込みの反応)
スタートライン方向に艇を向けてからスロットルレバーを握ったときの反応の具合です。選手が「起こしがいい」と言うときはレバーを握ってすぐに反応してくれるのですが、「起こしが悪い」ときは握っても一瞬間があってから動き出すのでその分を計算に入れなくてはならなくなり、当然スタート遅れの原因になります。握り込み、握り込みの反応も同じ意味で使いますが、こちらはスタートのときだけでなく道中でも使います。
◆ 出足
起こしてからの最初のアシ。車のギヤでいうとローの部分。「出足がくれば乗りやすさもくる」などと表現する選手もいます。一般的に出足重視の選手には差し屋が多く、「ピット離れがいい」=出足がきていると見てもいいでしょう。
◆ 行きアシ(=中間速)
出足の次のアシです。車のギヤでいうとセカンドの部分。ここがいいとスタートが決めやすいようで、「スリット近辺がいい」とか、「スタート放ってもついてくる」などと話す選手が多いです。
◆ 伸び(=直線、直球、ストレート)
行きアシの次のアシです。車でいうとトップの部分になり、回転が上がり切った状態のエンジンの最高速です。新聞に載っている「あと伸びしてる」は最高速に達するのが遅く、実戦では不向きなアシ。また、「直線でケツ振る」は回転が上がりすぎる状態のことで直線で失速することを指します。
◆ 初動のかかり(=ターンの入り口)
ターンマークにさしかかるときのかかり具合です。ここがいいとロスなくターンに移れます。新聞に「ブレーキが効かない」や、「エンブレ(エンジンブレーキ)の効きが悪い」といったコメントが載っていれば、ターンマークを行き過ぎてしまうという意味で、「フネの向きが悪い」といった表現をする選手が多いです。また「かかりが浅い」ともコメントする場合があります。
◆ 回りアシ
ターンのときのアシです。ターンアシ、ターン回りと同じ意味。回り足がいいと、狭い旋回半径で素早くターンマークをクリアでき、コーナー戦で優位に立つことができます。逆に悪いと旋回半径が大きくなり、走行距離が長くなる分だけ不利になってしまいます。
◆ サイドのかかり(=ターンの出口)
「ターンで流れる」とか「前に進んでない(押してない)」。新聞のコメント欄でよく目にする言葉です。ターンの出口でスムーズさがないと、遠心力で外に流れてしまいます。このアシがいいと「思い切って握っていける」や「ターンで返ってくる(戻ってくる)」の言葉に変わり、道中競りでも優位に立つことができます。
◆ 回ってからのアシ(=ターン後の立ち上がり)
出足、行きアシ系統がいいのです。「回った後が弱い」。「スムーズさがない」といった表現はターン後の立ち上がりを指すことが多いです。「減音特有の重たさがある」も代表的な一つですが、主に行きアシや中間速(レースアシ・実戦アシ)の部分での話です。
◆ 乗り心地
読んで字の如くです。最近はアシよりも「乗りやすさ」を重視する選手が増えてきています。「乗りづらいと一艇身ぐらいロスする」とはあるA1級レーサーの談話です。
◆ レースアシ
実戦アシです。伸びというよりも、出足、行きアシ、回りアシ辺りがいいというニュアンスです。
◆ スリット近辺のアシ(=Sのアシ)
行きアシと似たような感じです。
◆ 一瞬のアシ
握り込みの反応がいいということです。「選手によってはレスポンス」と表現する場合もあります。
◆ エンジンの回転数
新聞の内容によく出てくる「回転不足」とか、「回ってない・回りすぎ」はエンジンの回転数のこと。一般的に回転を上げると出足系統(反応)が良くなり、回転を下げると伸びが良くなると言われています。逆に、回転を上げすぎるとターンでキャビったり、伸びが売り切れたりするようです。回転を抑えすぎると「ひき波で弱い」とか「パワーがなくなる」と話す選手もいます。
|