原稿を書いていて、哀愁の念がこみ上げてきた。
ボートレース研究の初日紙面には選手紹介が載る。実力・調子・実績を勘案して、主力級6名が3行、それに次ぐ数名が2行、約半数は1行の文で特徴等を紹介する原稿なのだが…。
池上裕次を主力級6名から外すことになった。
池上は長らく埼玉の看板選手として活躍してきた。00年の第47回全日本選手権をはじめ、特別タイトルはすべて戸田で手にしており、一般戦を含めると当地通算18回の優勝がある。
池上の魅力は、戸田での神がかり的な強さにある。
全日本選手権を勝った時でさえ、今思えば全盛期を過ぎていたし、もう記念戦線から外れると思われた頃の05年、48周年記念を勝ったり。戸田での勝負強さに心底驚かされたものである。
要所で勝ち、必ず復活、存在感を誇示してきた池上。
だが、A1級から陥落し、全国的にもパフォーマンスは落ちているが、ここ数年、戸田でも精彩を欠いている。昨年の埼玉選手権で05年以来の優出を果たしたが、優勝は48周年以降、15節走って一度もない。8月のお盆開催、初日ウインビー選抜戦からは確実に外される。
「時代の流れだよ」
以前、他に調子のいい面々が多く、初日メインレースに乗らなかった時の、池上が力なく口にした言葉である。怒りの琴線に触れるのではないかと、恐る恐る心境を聞いたのだが、ホッとした反面、今まで選手取材をしてきて感じたことのない寂しさが心に残った。
もう一度、池上に奮起して欲しい。
老け込むのはまだ早い。同年代でいえば、先日の平和島DCでは長岡茂一が優勝、江口晃生、同期の三角哲男も本人曰く「下り坂でサイドブレーキ一杯に引っ張って」奮戦している。他場ではさておき、池上も戸田では強くあって欲しい。勝って当然、負けて酷評される選手であって欲しい。
また、池上の後継者と目されていた中澤和志は不振、須藤博倫も伸び悩んでいる。特別戦に出走している平石和男とて、近況は怪我で万全の状態ではない。スター街道を歩んできた背中を見せ、低迷する埼玉支部勢の起爆剤になってくれたらと思う。
昨年7月から使用されていたエンジン(以後=旧機)は6月23日で使い納め。6月28日からは新エンジン(以後=新機)・新ボートでスタートするのだが、今後の戸田競艇は更にインが弱くなるかもしれない…。
旧機に関して選手が「中途半端」「減音と標準の間」と言っていたのは、本体が減音型で、キャブレターの防水カバーだけが標準仕様だったから。しかし、新機は、本体はもちろんのこと防水カバーも減音仕様になった。空気が自由に吸い込まれていた旧機と違って、新機はカバーが二重構造のため、エンジンが発生させる吸入音は外部に放出されなくなり、そして空気吸入も吸気孔を通してのみになった。
簡単に言うと、エンジンのパワーダウンは必至。特にスローからの出足関係に影響すると思われるので、ただでさえインが弱いのに、余計にインが効かなくなるかもしれないのだ。また、今までは「減音と標準の間」で特殊な型ゆえに、慣れている選手にアドバンテージがあったのだが、戸田巧者・調整巧者の相場も変わってくるかもしれない。
イン逃げは買えない、センターまくりで舟券勝負が当たり前。そんな戸田競艇になるかどうか…、注目してみたい。